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夜の海に現れる光 - 夜光虫・海ほたる -

あっという間に春が過ぎ去り、初夏を迎えましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

私は来るべき夏に備え、撮りたいと思っている被写体があります。

それは”夜の海に現れる青い光”

夜の海に現れる青い光

波打ち際に見える青い光はいかにも幻想的ですが、人工的に作り出したものではありません。

実はプランクトンや海ほたるといった生き物が「生物発光(Bioluminescence)」という反応によって生み出しているのです。

生物発光とは?

生物発光、英語ではBioluminescence(バイオルミネセンス)といいます。

じつは世界中に生物発光をする生き物は居ます。主に彼らは海の中に多くみられますが、陸上にも一部存在します。

【海の中の例】

・ホタルイカ、オワンクラゲ、深海魚

【陸上の例】

・ホタル、一部のキノコ

 

一体なぜ、彼らはわざわざ光るのでしょうか?

 

それは”生存戦略”に他なりません。

生存戦略と一言で言ってしまったものの、目的はさまざまです(下表にまとめました)。

目的
敵を驚かせる・逃げる ホタルイカの発光で敵をけん制
獲物をおびき寄せる チョウチンアンコウの光
仲間とのコミュニケーション ホタルの求愛行動
カモフラージュ(カウンターイルミネーション) 水中で体の輪郭を消す深海生物

同じ光るという行為なのに、こんなにも意味を持たせられる生き物の多様性には感心せざるを得ません。

「自己顕示欲を誇示したいから、ピカピカに光ってんだろう!」と自信満々に思った私の思惑は見事に外れてしまいました。ざんねん、浅はかでした。

発光の仕組み

生物発光って不思議ですよね、どうやって光ってるんだろう…

これは化学反応によるもので、ルシフェリンという発光の元になる物質が酵素によって酸化反応するとオキシルシフェリンが生成されます。

この時、反応直後は励起状態ですが、基底状態までエネルギーを放出することによって発光が起こります。



生物発光については以上になります。

生物が光る目的や仕組みが分かったと思うので、本筋である”夜の海に現れる青い光”に話を戻します。

青く光る波は2つある!

下の写真を見比べてみると同じ青い光を放っていますが、左と右では少し様子が違いますね?

左は薄靄っぽく青白い光ですが、右は強く青い光がパチパチ(?)となっているように見えます。

感の鋭い皆様であれば、お気づきかもしれませんが、”2つの発光生物は異なる”のです。

①夜光虫

左の波の正体は「夜光虫(ヤコウチュウ)”、英語ではNoctiluca scintillans」という海洋性のプランクトンです。この名前、大発生すると夜に光り輝いて見えることから、ラテン語で「noctis '夜'+lucens '光る'」が由来になったと言います。めちゃくちゃかっこいい経緯ですやん…

発光する理由は諸説ありますが、大きく2つ。①捕食者から身を守るため、②捕食者の捕食者を引き寄せるため(間接防御)があると言われています。

波のような物理的な刺激であっても、小型の魚や甲殻類が来たと思い発光します。この時の光が敵を驚かせたり、眩しくて混乱させる効果があるのだそう。

 

植物分類学上では「渦鞭毛藻(うずべんもうそう)」という括りにされているみたいです。

ちなみに夜は綺麗な夜光虫ですが、昼間はみなさんご存知の”赤潮”として現れます。

誤解を招かないよう断りを入れると、赤潮はいろんな種類のプランクトンが大量発生して海が変色する現象になります。

ちなみに当該現象は栄養塩(窒素やリンetc..)や高温水が原因と言われています。

夜光虫で海が光った!というニュースが流れると、夜光虫の数以上に他の大量のプランクトンも海に存在しているということになります。それは極めて異常な事態なのです。

 

基本的にプランクトンは魚や甲殻類の餌になりますが、海面のしかも広範囲に植物プランクトンが存在するとなると話が変わってきます。植物プランクトンが大量に酸素を消費し、水中の溶存酸素(OD)が減少してしまい、最終的には海底にいる魚が酸欠で呼吸ができなくなり、死んでしまうのです。

夜光虫を見るための条件!

幻想的な光を放つ夜光虫は、条件がそろえば日本各地の海で出会うことができます。ただし、自然現象なので「運」も関わります。ここでは、できるだけ高確率で夜光虫を見るためのコツをご紹介します。

 

また、夜光虫は刺激に反応して発光します。波打ち際で手を入れたり、足で水をかき混ぜたりすると、光の反応が見られることもあります(安全な場所で行いましょう)。

項目 条件
時期 春〜秋(特に5〜9月)に多く発生。暖かい海水が好条件。
時間帯 夜間(日没後〜深夜)
天候 晴れていて、月明かりが少ない夜が理想(新月前後)
海況 波が穏やかで、海が濁っていない日
環境 街明かりが少ない海岸や、人工光が届かない入り江など

神奈川県では、由比ガ浜・材木座海岸、江ノ島・稲村ヶ崎、茅ヶ崎海岸などで見られるみたいですね。

赤潮が発生するとヤフーのトップニュースで記事になりやすいので、そういった情報のチェックであったり、Xのタイムラインなんかで情報収集するのも良いかもしれません。

 

なお、赤潮が発生してからの観察可能な期間は、数日〜1週間程度が一般的です。ただし、海の環境や気象条件、潮流、夜光虫の密度によって前後することがあります。

状況 目安期間 備考
発生初期 1〜2日 海面が赤っぽく変色し始めるが、発光は夜のみ確認可
最盛期 3〜5日間 光の量が多く、波や刺激に強く反応する
終息期 1〜2日 数が減少し、光も弱くなる。天候や潮で一気に消える場合も

②海ほたる

右の波の正体は「海ほたる」になります。貝虫網に属しますが、甲殻類になります。ミジンコに似た生き物です。

体長は長さ3.2〜3.5mm程度と夜光虫と比べると、大きなサイズであることがわかります。

引用:ホタルはなぜ光る? | キヤノンサイエンスラボ・キッズ | キヤノングローバル

 

この海ほたるの生態ですが、昼間は海底の砂中で生活し、夜間に遊泳して捕食や交配を行います。主に死んだ魚などを食べる、海の掃除屋さんです。

実はこの特性を活かして、海ほたるを捕まえることができるんです。

 

方法はシンプルです。ペットボトルに餌を入れ、引き上げるだけ。簡単に表にまとめましたが、より詳しく記載しているリンクを貼付します。(愛知大学 西本ゼミ)

手順 内容
ペットボトルの上部にカッターなどで穴をあけ、ひもを通します。
ペットボトルの中に石とエサ(魚肉ソーセージなど)を入れて海に沈めます。
10分経ったらゆっくり引き上げて、観察します。
観察が終わったら、ウミホタルを海に帰してあげましょう。

 

6月のウミホタル採取〜小型個体がいっぱい〜

nisimoto.wordpress.com

 

海ほたるは夜光虫と異なり、餌を求めるために遊泳するため、基本的には波打ち際に自然に集まるというより、恣意的に捕まえて撒くなどしないと写真として綺麗に収めることはできないと思います。(実際にそういった記載の記事を見つけております。以下リンクを参照ください。)

itouyaryokan.com

海ほたるを見るための条件!

基本的には、夜光虫と大差ありません。

項目 条件
時期 5月〜10月頃。特に初夏〜夏の夜が最も活発。
時間帯 日没後〜深夜(20時〜24時が目安)。
天候 晴れていて月明かりが少ない夜が理想的(新月前後)。
海況 波が穏やかで海が澄んでいると発光が見えやすい。
環境 街明かりの少ない浜辺や入り江など、人工光の影響が少ない場所。

海ほたるといえば、東京湾アクアラインに浮かぶPAを想像すると思います。実は一般公募によって決められた名前で「海上に浮かぶ光」ということで「海ほたる」となり、同名の生物をキャラクターとして使うことになったものになります。

引用:https://life-style.chiba.jp/facility/103/

 

そう言ったこともあり、特に千葉県が生き物の海ほたるを観察できる有名な場所としてあります。特に千葉県の南房総では非常に多く生息しています。沖ノ島公園、白浜フラワーパークなどで見られるみたいです。

まとめ

いかがだったでしょうか?

皆様も夜の海に現れる青い光を観察して、幻想的な体験をしてみてください。お子さんがおられる方は夏休みの自由研究の題材なんかにも良いかもしれませんね。背景を知っていると、現象に対していろんな感情を持つことができるので楽しいです。夜光虫は運要素が非常に大きいので気長に待ちたいところです。